教育者,研究者としての立場
ポスドク的な立場で,出身研究室に未だお世話になっている私が,教育者や研究者の立場を語るのはおこがましいとは思うが,ふといろいろと考えてしまい,もやもやするのでアウトプットしてみる.
もやもやの発端
一応,指導者側として日々学部生や院生の指導・支援に関わる中で,機能・サービスの開発の優先順位について一貫した考えを述べることに難しさを感じた.
もっとザックリ言ってしまえば,考えが変わってしまう.別に学生を困惑させたいわけではないのに,何故か.
考えが変わる原因
教育者,研究者それぞれの立場,さらに卒業まで残された時間によって変わっているのではないか.
ここでいう各立場の思惑をざっくり述べる.別に立場の呼称はどうでも良い.
教育者
よりよい経験を積んで,社会に巣立っていって欲しい.テーマ決めが大変で立ち上がりが遅くなるので(それが仕事と言えば仕事なんですが),後輩に引き継いで欲しい.
何もかもが未完成で,卒論が書けず,卒業できない事態は避けたい.
研究者
できうる限り,研究成果(論文)に繋げたい.そのためにも,1年では短いことが多いので,後輩に引き継いで欲しい.
引き継ぎに関しては私の環境がだいぶ偏っている気がする(反対意見も多くありそう)のですが,今回のところ,共通事項として考えから除く,という意味であえて書いた.
シナリオ(と言っても具体的でないですが)
ある既存システムAがあるとする.
- 既存システムの機能
- a機能(国際会議に出した)
- b機能
- 学生の提案
- a機能はa'に改良しましょう
- b機能はb’に改良しましょう
- c機能を足しましょう
- d機能を足しましょう
上記提案でボリューム的には卒研に十分相当し,かつ実現困難な技術的問題はないものとする.
また,頓珍漢な(無意味だったりマイナスだったりする)提案はないものとする.
卒業までの時間によって各立場で考えること
6月から10月あたりは微妙なラインなので,今回は省く.
まだ卒業まで時間がある時期(4月〜6月)
研究者として取り組み内容に期待する気持ちが強い.
研究者 ≧ 教育者,な心のバランス状況.
- 教育者
- 考え:
- システム開発の経験的に全部やった方が良いでしょうし,やれると思う.何故その機能が必要か? を語れるようにしましょう
- 改良はシステムの理解にも繋がるので先にやった方が良い
- 結論:a', b', c, d全部やりましょう.a'とb'を優先的に着手しましょう
- 考え:
- 研究者
- 考え:
- この取り組みでPaperにできそうなところはないか?
- a機能は既にPaperにしているので,できれば変更は避けたい
- c機能はPaperになりそうだ
- 結論:a'やらない方がいい.cは是非チャレンジしてください.
- 考え:
教育者的には全部やりましょう.しかし,研究者的考えではa機能は弄りたくない.
ので,学生へのコメントとしては「a'はやらないで欲しい(し,そんなに重要ではない).b機能の改良とc,d機能の開発を卒研テーマにしましょう」
優先順位は,b' > c > d,a'はカット(まずはシステム理解に繋がるb'改良,その後はPaperに繋がりそうなc機能,最後にd)
卒業が迫ってきた時期(10月以降)
既にシステムができあがって,後は卒論,というのは除き,まだ開発に着手できるかできないかぐらいの状況を想定する.
当初の予定通りの機能はできそうにない.研究ではなく,学生が卒業できることを最優先.
教育者>研究者,な心のバランス状況.
- 教育者
- 考え:
- なんとか卒論を仕上げられないか.評価実験も必要だ
- 既存の改良ではインパクトに欠け,改良だけで卒研とするのは難しい
- 評価実験を考えると動いているものを弄るのは避けたい
- 技術的にはc機能よりd機能の方が簡単だ
- 結論:d機能優先で,なんとかc機能までやりましょう
- 考え:
- 研究者
- 考え:この状況では論文になりそうとか言っている場合ではない.来年に期待.
優先順位は,d > c, a'とb'はカット
考えの違い
前期はb'改良を優先に,d機能は一番優先順位が低かった.
しかし,後期になったらd機能が最優先に.改良は原則やらないことに.
うーん.これは学生側は混乱してしまうよね……さらに,省いた6月から10月の間が,その時の気分によって朝令暮改になってしまっているのかもしれない.
学生に優先順位を語る時には,理由もセットで語るように心がけてはいるのだけど,理由そのものが教育者的立場なのか研究者的立場なのかによって変わってしまうので,難しい.
ってごちゃごちゃ書いたけど
要するに,最初は長期的視点,〆切りが近くなったら短期的視点で物事を考えているっていう単純な話なのかな.